粉体塗装の数値化で見える品質。小泉塗装工業の先進的なアプローチ

『品質とはお客様が求めているもの。お客様がどこまでの品質を求めているかを全て数値化することで具現化する。』工業塗装業界では数少ない、徹底したデータ管理でお客様のニーズに応える。小泉塗装工業株式会社、小泉和幸 代表取締役にお話を伺いました。

―――どの様な業務をおこなっている企業ですか?

小泉塗装工業株式会社は昭和36年に創業し昭和45年に法人化しました。
金属焼付塗装を主として営業している会社になります。鉄製品を中心にアルミ、ステンレスといった非鉄の製品に対して、塗装を行っています。液体塗装と粉末塗装の両方に対応する設備を有しています。

お取引しているお客様の業種や対応製品は多岐にわたります。
例を上げると、半導体の装置、アーケードゲーム、通信機器、医療機器などなど、あらゆる分野の金属を使った製品の塗装を行っています。

公衆電話ボックスの大きさから手のひらサイズまで対応可能

―――塗装対応する製品の大きさはどのようなものがありますか?

一体型になっているものですと、昔よく見かけた公衆電話ボックスぐらいのサイズから、手のひらに乗るサイズまで、多種多様なサイズの製品に対応しています。

―――大小さまざまな製品に対して、どのような設備で対応しているのですか?

弊社では、液体(有機溶剤)を使った溶剤塗装をする工場と、粉末状の塗料を使う粉体塗装を得意とする工場の2つの工場に分けています。

溶剤塗装は、レシプロ塗装機というロボットがメインで塗装する工場になっていて、こちらは手のひらに乗るようなサイズの製品を大量生産するのに優れています。職人が手作業で塗装することもあるのですが、主にはロボットが対応しています。

粉体塗装の工場では、お客様からお預かりした製品を、工場に敷設されたトロリーコンベアラインを使い、「前処理(製品に付着した油膜や汚れを洗い取る作業)⇒塗装⇒焼付」までを、一連の流れで効率的に製品化していくことができます。

粉体塗装の利点というのは様々なサイズのワークもこなすことができて、環境面の観点からもニーズの高い塗装工法になっています。弊社が力を入れている塗装工法になります。溶剤塗装も粉体塗装も塗料の材料が異なるだけで基本的な流れは一緒になります。

徹底した清掃と整理整頓が品質向上へ

―――お客様から依頼いただいたものを塗装するのは、神経を使うと思うのですが、作業の中で気を付けているポイントを教えてください。

基本的なことですが、お預かりした製品に傷がつかないようにする。落下させないような工夫はしています。あとは工場の清掃と整理整頓です。

良いモノづくりをするためには、工場の清掃と整理整頓は品質向上と安全管理の面からも必要だと思います。

清掃がきちんとできていれば、製品に対してゴミの付着などを避けられるので、塗装品質を高めることが可能となります。
整理整頓ができていれば、怪我のリスク低減にもなりますし、お客様から預かった製品の破損を避けることもできると考えています。

―――本当に整理整頓がされている工場だと感じます。清掃などへ意識を向けるきっかけはあったのですか?

ある大企業のお取引先の工場見学をさせていただいた際、案内いただいた工場長が、床に落ちているゴミを拾ったところを見たんですね。

その時「これだけ大きな規模の会社でも、そういう意識をきちんと持たれているんだ」と思ったのです。それから自分もそういう所に意識を配るようになりました。

背中を見せるではありませんが、そういう小さなことが従業員にも伝わり、意識が高まってくれていると思いますし、ひとつひとつの積み重ねが、良い仕事にもつながってくるのではと思っています。

データを駆使して確かな品質、納期管理

―――御社の強みを教えていただけますか?

強みとしては製品の品質、納期の管理をデータで管理しているところです。
品質に関することでは、職人の技術を勘だけに頼らず、最新の機器を使ってデータ化できるようにしていますね。データを用いることで、作業の標準化と品質の安定化を図ります。

―――納期や生産管理はどうでしょうか?

事務側を管理部という位置づけとして捉え、管理部と製造現場を連携し、こちらもデジタル機器を取り入れ、個人の経験や勘に頼らない生産管理と納期管理をしています。

―――特に中小企業の製造業全般に言えますが、データで管理するということは、まだまだ全然実践されてないと思います。データを用いて品質や納期を管理していくようになるきっかけはあったのですか?

私自身が小泉塗装工業に技術系として入社しており、技術者としての経験や営業活動を通して、データの重要性を理解しました。
同業他社さんの見学やお客様との対話から、データを用いて作業の標準化が必要であると気づき、徐々にデータ化に取り組んできました。

―――データ化や標準化したことによるお客様からの評価はどうですか?

お客様から喜ばれていますし、評価も頂いています。
トレーサビリティ(履歴情報管理)や品質・納期の管理が求められ、それを積み重ねた結果が今の評価となっていると思います。

そういった意味では、お客様に育てていただいたと言えるかもしれませんね。

信頼の構築と新規顧客獲得

―――お仕事を依頼されるお客様は御社を何で知るのですか?

大半のお客様は口コミです。後はホームページですね。最近ですと、「粉体塗装の量産が得意で品質や管理ができる。」このようなワードから弊社を知り選んでいただく新規のお客様が増えています。

―――小さな製品の量産はイメージがつくのですが、大きい製品も量産できるということでしょうか?

ワークによって「、量産」という言葉の範囲が異なりますが、「お客様が求める量と質をお客様の求める納期で対応できる会社。」そこに「粉体塗装」という技術的なワードが絡むと、対応できる会社はかなり絞られます。
さらに「データで品質や生産管理」を徹底している企業となると、圧倒的に少ないと思います。

―――粉体塗装に舵を切ろうと思ったきっかけは何かありますか?

環境への影響や減産傾向を考慮し、溶剤塗装から世界的に主流となっている粉体塗装に転換しました。品質の統一化は勿論のこと、将来的な人手不足への対応とデータ化された塗装の実現において、粉体塗装がより効果的であると判断し、これを主力として採用する方針を取りました。

お客様が求める品質への挑戦

―――品質というのは、人によって抽象的な要素が含まれていることがあるように感じます。御社が考える品質とは何でしょうか?

品質はお客様の求めるものだと思います。
お客様がどこまでの品質を求めているかを、全て数値化することで可視化しています。

意匠性(工業製品等において、形・色・模様・配置など加える装飾上の工夫)でいうならば、色差、光沢、膜厚、ゴミの大きさを測定するなど、数値化できる機器を揃えてお客様の求める品質を理解できるようにしています。

―――品質を極めようとすると、コストは際限なくかかると思いますし、写真の画素数などと同じで、ある程度まで行くと人の目では見分けがつかなくなると思うのですが、そのような判断はどのようにされるのですか?

お話ししたとおり、数値化できる項目はいくつもありますので、そこはもちろん上限も分かるんです。ですので、お客様がイメージしている品質のものを、しっかりと制作することができるのです。

社内はもちろんですが、お客様と生産管理やこれらのデータを開示・共有している企業は、あまりないと思います。

持続可能な社会への貢献と将来の展望

―――最後に今後の抱負を教えてください

弊社の企業理念は、「お客様の求める品質をお届けする」ことです。この理念に基づき、お客様が期待する品質を過剰にすることを避け、それに満たない状態にも陥らないよう心掛けています。

このバランスを保ちながら、コストを考慮した実行ができる企業になることを目指しています。同時に、若い才能が活躍できる環境を提供し、社会に貢献できる会社であることも重要視しています。これらの要素を組み合わせ、持続可能な社会への貢献を果たす企業に成長していくことが目標です。


【 企業情報 】
小泉塗装工業株式会社
代表取締役小泉和幸
千葉県匝瑳市時曽根150
TEL:0479-72-2546
FAX:0479-72-1247
http://www.koizumi-tkk.com/